「虚構新聞」というウェブサイトがある。サイト解説者の目的は、
当サイトは現実のニュースをパロディにした諷刺・皮肉が開設の目的であり、この記事を通じて元ネタである世の諸事象に関心を抱いていただきたいと思っております。
ということだが、このパロディがなかなか質が高いものが多く、よく騙されて真に受けている人をネット上で見かける。
虚構新聞自身は、
記事の真偽を判断しないコピペ対策として、見出し・記事中に「これは嘘ニュースです」という隠し文字(背景と同色にした文字)を入れています。
と謳っているように、自サイトの「ニュース」は全部嘘だと宣言している。
だが、これは「自己言及のパラドックス」によく似ている。「この文章は嘘です」という例のパラドックスだ。
「このサイトのニュースは全部嘘です」と、「このサイトの内容は全部嘘です」は厳密には違うが、ニュース以外の部分に本当のことが書いてあると断言できる根拠も無い。
そういう点も含めて、
虚実の狭間を行き交う可能性世界の事件を報道するニュースサイト
なのだろう。この言い回しは言いえて妙だ。
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ところで、この「自己言及のパラドックス」から、連想したものがある。負の数の平方根だ。これはアナロジーでしかないのだが、「偽(マイナス)」の平方根を開こうとすると、真(プラス)とも偽(マイナス)とも結論付けられなくなってしまう。
数学的には、プラスでもマイナスでもない虚数(i)を想像することで数の世界は拡張された。
繰り返しになるが、これはアナロジーなので「偽(マイナス)」の平方根が真でも偽でもない何か別のものになるとは断言できない。けれども、真偽なんて二分法も世界を単純化した結果でしかないのかもしれない。
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さらにアナロジーを進めてみる。数学の試験ではよく嵌められたポイントだが、「真(プラス)」の平方根だって、プラスとマイナスの二種類がある。そう、1の平方根には-1もあるのだ。
だから、「この文章は本当です」はパラドックスではないが、本当にその文章が正しいケースと、真っ赤な嘘であるケースがある。「この文章は本当です」の文章も嘘、内容も大嘘であれば、矛盾はしていない。
絶対本当だから、大丈夫だから、オレの言うことを信じて。
本人が「自分は正しい」と自己言及していても、本当に正しい保証は無い。
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では、虚構新聞とは反対に、正確さ、公正さを掲げる他のメディアはどうだろうか。
などと考えていると、つくづく虚構新聞ってのは興味深い存在であると思うのだ。
虚構新聞はいつか「本当のこと」を書いてしまうだろう。やらかしちゃったときにどんなコメントを出すのか、個人的にはとても興味がある。