ああ、これを「未解決事件」の枠内で扱うのか。そのように、ここ1ヶ月ほど、ずっと思っていた。
未解決事件として扱うということは、この事件のどこが未解決なのか、そこに明瞭に光を当てなければならない。だから、NHKは相当深いところまで取材を進めたのだろうと感じていた。
まだ明日の放送が残っているが、あの膨大なテープがその答えだったのだろう。
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古参教団幹部の証言による再現ドラマは、一連の経緯の時間的経過をおさらいする役割が大きかった。
だが、松本が何を思っていたのか、そこを明らかにしたのは700本に及ぶ録音テープ。松本と幹部たちの、教団設立から強制捜査ころまでの会話が収められているという。
なぜ、そんな貴重なものが、しかもそんな膨大なものが、警察に押収されずに残されているのか。残された経緯。残した人物。非常に気になるが、ここはそこには目を瞑る。
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テープの内容から明らかになるのは。
教団が、設立初期から武装化を進めていた事実。それは、従来の定説、国政選挙敗退後よりもはるか前から。
そして、教団設立以前から松本が一貫して目指していたのは、現存する日本国政府の打倒、そして世界の超大国の打倒。要するに革命と世界征服。
資本主義と共産主義を打倒して、宗教中心の国を作る、そのような下りの松本の発言があった
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その目的達成のため、彼は手段を選ばなかった。
人材と資金獲得のために宗教を利用し、政府打倒のために武装計画を推し進めた。
それを進めるための知性とカリスマが彼にはあった。
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では、なぜ松本はそんな野望を抱いたのか。そこまで突っ込んで欲しかった気もする。ただ、私には、現在の日本国政府を、米国主体の世界秩序を壊してしまいたいという願望が理解できなくもない。私には、とてもではないが、武装闘争をする気はないが。
首都東京の、しかも権力の中枢たる霞ヶ関の駅であのような事件が発生したことに、米国を始めとする諸国が衝撃を受け、異常な関心を示していた背景には、彼らが松本の本来の狙いにうすうす気がついていたからなのかもしれない。あの事件が「テロリズム」だと呼ばれる理由は、そんなところにもあるのかもしれない。
「野望が大きければ大きいほど、失敗したときの代償は大きい」とは誰の言葉だっただろうか。
松本の身の丈を大きく超えた野望だったのは確かだろう。
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他にも残されている謎はいくつかある。資金源、内通者、外部協力者、他組織との関係など、挙げだしたらキリがないが。明日の放送ではどこまで放送されるのだろう。
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5月27日夜追記。一連のサリン事件を巡るオウムと警察の攻防。特別新しい事実は無く、驚くような情報も無く。
やはり、松本は武力による国家打倒を目指した野心家であって、宗教はその道具として使われたに過ぎない、と考えるのが妥当に思える。その観点から言えば、松本は宗教家でもなんでもないし、オウム真理教は宗教団体とは呼べない。信者は偽の教義に踊らされていたに過ぎない、そういうことだ。
ただ、組織内部に、警察の情報をキャッチできるアンテナとなる人物を擁していたことを考えると、警察だけではなく他組織にも情報網を張り巡らせていた可能性もある。そして、特に資金的な面に関して、外部から支援を受けていたのではないだろうか。
そのあたりは、今回の番組で明らかになってきた表面的な謎に比べたら、本当のオウムの闇。こちらは未来永劫何も明らかにならない可能性も高い。